『小説』 野崎まど ★★
『小説』 野崎まど
評価
★★(評価額100円~400円レベル)
この本の単行本の実際の定価は2,145円。正直定価で買うほどの本ではない。単純にもっとページ数が多かったり、内容が充実して面白い本があるのでそっちにお金出したほうがいい。「小説」というタイトルでも小説の楽しさを感じさせてくれる本ではなく説教臭い本。
装丁がギラギラして凝っててカッコイイのでそれで高いのかと思ったらkindle版もほぼ同じ値段だったので驚いた。kindle版はもっとオススメしない。
装丁がカッコイイから表紙向けて本棚に置いといてインテリアとしては使えるかも。
装丁デザインと「小説」というテーマに関する考えはちゃんと書いてあったので★★にした。
あらすじ
読書好きの少年内海が読書以外のことを何もせずニートになって、小説家になった友達から「小説を読む意味」を教えてもらう話。
感想
・主人公について
(結末ネタバレ含みます)
主人公の内海が小説読むのが好きなだけのなんの努力もしない人間なので全く魅力を感じず、魅力的でない主人公の話は読み進める気力がだんだん無くなってくる。自分で「小説は読むだけじゃ駄目なのか」と疑問を提示してわめく割に、自分で小説を書いてみるでもなく、自発的に文学や哲学を勉強するわけでもなく、ニートやって趣味を楽しむだけで、主体性が全然無いので、この人観察してて面白いですか?って感じだった。
自分の大好きな趣味のことくらい自分で熱く追い求めたらいいのに、結局、小説を読むことに対する答えを努力して見つけてきてくれるのは外崎。
最後に外崎(髭先生)から答えをもらって何も頑張ってない内海に涙されても全然感動できなかった。
こんな主人公に振り回された外崎が最後哀れに思えてきた。
まぁフィクションだし、この登場人物たちの人生とか無いしどうでもいいんですけどね。
・勝手に否定されて肯定される
小論文で全然書けない内海の内心を書いて(p.105あたり)「お前の精神に貸したものを返せ」なんて書いて、「そこの読んでるだけで何も生み出してないお前!受け取るだけなんて駄目だぞ!」と〈読んで楽しむだけの人〉を勝手に否定してくる。「お前もそう思うだろう?罪悪感感じるだろう?」と勝手に罪悪感を押し付けられる。というか締め切り追われて書けなくてストレスたまった著者からの八つ当たりされてるように思えてくる。
それで最後には「小説を読むのは意味を増やすことで、それは宇宙の自然の摂理だからいいんだよ」と勝手に偉そうに肯定してくる。
他のレビューを見るともっと読書家の方々は「読んでるだけじゃ駄目なのかも」と感じることが多いらしい。でもそこまで考えるのって、小説家かよっぽどの読書家だけでたいていの一般人にとっては小説読むなんてただの趣味。
ほとんどの人は別に「読むだけじゃ駄目なんだ」と思ったことはないだろうし、この本に肯定されなくても勝手に読むだけ読んで楽しむよね。そういう楽しむだけの人が大勢あっての小説家でしょう。勝手にお前の罪悪感とストレス押し付けてくんなと思った。
・宇宙の例え、面白くない
小説を読むことは宇宙の原理に近しい、みたいな例えで説明してくるけど、正直「宇宙」って何の例えでも使われるからありきたりだなと思った。宇宙って例えるだけでその対象が壮大ですごいものに感じられるからね。
この本でいう「物語の創作」みたいな人間の原始時代からの行為が宇宙のことに例えられるって言うなら「料理は宇宙」でも「服飾は宇宙」でも言えるじゃん。
他の作家でも宇宙について調べて思いついたら書けそうな例えだったから、この本だからこそ得られた発想とか観点とかのインパクトを感じなくてこの本の価値を感じなかった。
